へっぽこ社会人の禁パチ生活録

パチンコ依存症のアラサー社会人がジタバタしてみるブログです。

『「ギャンブル依存症」からの脱出』を読んでみる その2

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(前回の続きです)

 

さて、著者が提唱している「欲望充足法」だが、端的に言うのであれば、ギャンブルに依存する原因となっている自身の欲望を理解し、その欲望をギャンブルとは別の方法で満たすことである。

著者が言うには、ギャンブルにのめり込むきっかけで一番多いのはお金を稼ぎたいという金銭欲である。しかし、借金をしてしまうほどにギャンブルに依存している人を治療していると、そうした金銭欲以外の重複した欲望があることがほとんどだと言う。

重複した欲望とは、名誉欲(周囲から賞賛を浴びたい)や現実逃避欲(現実から目を逸らしたい)などであり、金銭欲の裏にこうした欲望が隠されていると言うのである。

 

治療法は至ってシンプルである。

スッテプ1…お金を稼ぐためだけにギャンブルをしているのではないことに気付く。

ステップ2…金銭欲の裏に隠れた「真の欲望」を知る。

ステップ3…「真の欲望」を満たすための代替手段を身につける。

このステップを踏んでいくことがギャンブル依存症の治療になると言い、実際にこのアプローチを実践した事例がいくつか取り上げられている。

 

注目しなければならないのは、著者はギャンブルそのものを害として捉えていない点である。ギャンブルに依存すること自体が問題ではなく、いわゆる「依存症」と言われる状態(「調節障害」…自分で歯止めがかけられない状態)を問題としている。それゆえに、自分の欲望を理解した上で目的を明確にして(欲望を一つに絞って)ギャンブルをするのであれば問題はなく、それができない場合に代替手段に乗り換えること提案しているのである。

 

「真の欲望」について、僕自身のことに置き換えて考えてみる。僕は著者の言う名誉欲も現実逃避欲もどちらも持ち合わせている。元々は「楽しみたい」という思いで始めたパチンコ。しかし、現実で物事が上手くいかなかったりストレスが溜まったりすると頻繁に通うようになり、いつしかパチンコで勝つと満たされるようになっていた。そうした欲望に気付いたからこのブログを始めた訳でもある。

 

しかし、今僕が痛切に感じていることは、その欲望に気付いたからと言ってすぐにやめることができるわけではなく、また代替手段を見つけることもそう簡単ではないということだ。著者もすぐにやめることができるなどとは一切書いていないが、代替手段がどれくらい有効なのかについては特に詳細には論じられていないのである。

例えば、現実逃避の手段として睡眠をとることや、名誉欲を満たす手段としてカラオケに行くことなどが書かれている。こうした方法が上手くいく事例もあるのだろうが、「寝ること」や「歌うこと」がパチンコ依存症者にとってどれくらい効果があるだろうか。

 

著者が説明するように、自分自身の「真の欲求」に気付くことは重要であると思うし、ギャンブル依存症を克服する上でこの過程は欠かすことができないと思う。本書はその点を重点的に述べていることに価値のある書籍である。

しかしながら、その次のステップである代替手段を身につけるという部分については、おまけのような扱いになってしまっている印象を受けた。

(「その点については人それぞれだ」と言われてしまえば終わりなのだが…)

 

また、小遣いの範囲内でのギャンブリング(本書では「コントロール・ギャンブリング」と言われている)に落ち着くことについても治療の成功として扱われているが、ギャンブルに依存していた人が少額のギャンブルに落ち着いた状態を「成功」と見なしてよいのだろうか。その点については、僕の浅薄な知識では何とも言いようがない。批判を恐れずに言うのであれば、また依存症に逆戻りしてしまいそうな気がするのだが。

 

 

その3に続く。